香車の手筋を覚えよう
端歩・端攻めの基本を覚えようや将棋の格言を覚えようでは、端の筋にある香車(端香)を活かした端攻めの考え方や、「遠い香車に用心」という格言をすでに紹介しました。香車は将棋の駒の中でも動ける方向が特に少ない駒で、手筋のバリエーションもそれほど多くありません。この記事ではその中でも、まだ扱っていない香車という駒そのものの性質に注目し、重複しない範囲で使い方の考え方を解説します。
端香・端攻め・遠い香車に用心のおさらい
香車に関わる基本的な内容は、すでに次の記事で解説済みです。ここでは重複を避けるため、まだ扱っていない考え方を中心に紹介します。
- 端歩とは(端香の紹介を含む)(端歩・端攻めの基本を覚えよう) — 端の筋にある香車を「端香」と呼ぶこと、端歩を突いて端香の通り道を広げる考え方を解説しています。
- 端攻めの基本的な考え方(端歩・端攻めの基本を覚えよう) — 前に駒がなければどこまでも進める香車の性質上、端の筋で最も力を発揮しやすい駒だとされていることを解説しています。
- 遠い香車に用心(将棋の格言を覚えよう) — 香車は離れた位置にあっても油断できない、という格言です。
香車の一方向性という制約
駒の動かし方をあらためて整理すると、香車は前方1方向にしか利かず、左右にも後ろにも斜めにも一切利きません。これは桂馬の手筋を覚えようで紹介した「控えの桂」の話と比べても、さらに選択肢の少ない性質です。桂馬は跳ぶ前こそ後戻りができませんが、跳ぶ瞬間には前方2方向(左右どちらかの斜め前)のどちらに跳ぶかという選択肢が残されています。これに対して香車には、そもそも前に進む・進めないの二択しかなく、進む方向を選ぶという発想自体が存在しません。
さらに、香車は銀や金とも異なります。銀は斜め後ろに、金は真後ろに、それぞれ一度だけ引き返す余地が残されていますが、香車には後ろに戻る手が一切ありません。一度前に進めてしまうと、その後は「さらに前へ進むか、その場にとどまるか」の二択しかなく、後戻りは絶対にできない駒です。将棋の駒の中でも、動ける方向の少なさという点では特に際立った駒の一つだと言われています。
この性質があるため、香車を動かすタイミングの見極めは、桂馬以上に重要になると言われています。桂馬であれば跳んだ先が悪くても他の方向という選択肢自体は最初からありましたが、香車は一度進めてしまえば選べる道はもともと1本道しかありません。まだ働きどころが見えない局面では、香車を急いで前に進めず、他の駒の動きを見ながらタイミングを計ることが大切だとされています。
香車を打つ場所と成りをからめた使い方
持ち駒の香車を敵陣に打つときも、桂馬の打ち場所と同様、打つマスによって次に成れるかどうかが変わります。ただし、香車には桂馬ほど厳しい制限がありません。桂馬には行き所のない駒の反則があり、自分から見て最も奥の段とその手前の段(先手なら1段目・2段目)には打てませんが、香車が打てないのは最も奥の1段(先手なら1段目)だけです。つまり香車は、桂馬なら反則になってしまう2段目にも、問題なく打つことができます。
この2段目は、成りの対象になる敵陣3段(1〜3段目)にすでに含まれているマスです。そのため、2段目に香車を打っておくと、次に前方へ1マス進めるだけで、その手の終点も敵陣3段に入り、成って「成香(なりきょう)」にすることができます。桂馬の場合、打った時点で敵陣3段に入れるのは3段目に打った場合だけでしたが、香車は2段目・3段目のどちらに打っても、次の一手で成りをにらむことができる、という違いがあります。
下の例では、3二のマスに香車を打っています。ここから▲3一香と1マス進めるだけで敵陣3段の中を移動する手になるため、次の一手で成香にする含みが生まれます。もちろん、香車は前にどれだけでも進める駒なので、もっと手前の段に打っても、道がさえぎられていなければ一手で敵陣3段まで進んで成ることもできます。どの段に打つかは、成りをにらむ速さと、香車自身の安全度・味方との連携とのバランスで判断することになると言われています。
香車の手筋をもっと詳しく学びたい方へ
香車は動ける方向こそ少ないものの、打つ場所や成りのタイミング次第で終盤の攻めを大きく後押しできる駒です。手筋を集めた問題集で繰り返し練習すると、実戦で自然に活かせるようになります。
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