女流棋士制度を覚えよう
竜王戦の説明などで「女流棋士」という言葉を見かけたことがある方もいるかもしれません。実は将棋界には、四段以上のプロ棋士を指す「棋士」とは別に、女性だけを対象とした「女流棋士」という制度が存在します。この記事では、女流棋士制度が棋士制度とどう違うのか、いつ・なぜ発足したのか、女流タイトル戦がどのような枠組みで行われているのかを、時間が経っても変わりにくい制度・歴史の範囲でわかりやすく解説します。
女流棋士とは何か——棋士との違い
日本将棋連盟には、実は2つのプロ制度が併存しています。ひとつは、男女の区別のない「棋士」の制度です。段位・級位制度を覚えようでも触れた通り、棋士になるには養成機関である「奨励会」に入会し、昇級・昇段規定を満たして四段に昇段する必要があります。この棋士の資格には、男女による区別はありません。
もうひとつが「女流棋士」の制度です。女流棋士は、棋士とは別に女性のみを対象として設けられた資格制度で、奨励会とは異なる養成の場(研修会など)を経て、一定の実力を満たすことでプロ入りする仕組みになっています。棋士に「棋士番号」が付与されるのと同じように、女流棋士にも所属組織ごとに「女流棋士番号」が、プロ入りした順に付与されます。
女流棋士制度はいつ、なぜ発足したか
女流棋士制度は、1974年に発足しました。当時の日本将棋連盟副会長であった大山康晴十五世名人らが、将棋の普及を進める観点から女流棋士の必要性を提唱し、日本将棋連盟棋士会の決議を経て、制度が正式に発足したと伝えられています。同年10月31日付で最初の女流棋士6名が誕生し、同じ日に、女性だけを対象とした初めてのタイトル戦(現在の女流名人戦の前身)も創設されました。女流棋士制度の発足と、女流タイトル戦の創設は、同じ日に始まった歴史を持っています。
女流タイトル戦のしくみ
女流タイトル戦は、プロ棋士のタイトル戦とは別建ての棋戦として運営されています。新聞社やスポンサー企業が主催し、番勝負(複数局の対局で勝敗を決める形式)を戦ってタイトル保持者を決めるという基本的な枠組みは、名人戦以外のタイトル戦と共通しています。1974年度に最初の女流タイトル戦が創設されて以降、時代を経て新しいタイトル戦がいくつも誕生してきました。将棋雑誌の主催で生まれたタイトル戦、他のタイトル戦の姉妹棋戦として生まれたタイトル戦、地方自治体が初めて主催者となったタイトル戦など、それぞれ異なる経緯・主催者のもとで創設されている点が特徴です。
女流棋士になるにはどうすればいいか
「女流2級」の資格を得ることで、女流棋士としてプロ入りできます。代表的なルートとして、次のようなものが知られています。
- 日本将棋連盟の研修会に所属し、一定以上のクラスへ昇級する
- アマチュアとして、アマチュア出場枠のある女流公式戦で、一定以上の好成績を収める
年齢の上限や必要な対局数といった具体的な条件は、これまでも制度改定によって何度か見直されてきており、今後も変更される可能性があります。正確な最新の規定は、日本将棋連盟や日本女子プロ将棋協会(LPSA)の公式サイトで確認するのが確実です。
所属できる組織
女流棋士は、日本将棋連盟に所属する女流棋士、日本女子プロ将棋協会(LPSA)に所属する女流棋士、そのどちらにも所属しない「フリー女流棋士」という、大きく3つの立場に分かれます。LPSAは、2007年に女流棋士たちの手で設立された団体で、日本将棋連盟とは別の組織として、独自の女流棋戦の運営や普及活動を行っています。
女流棋士と棋士の関係
女流棋士と棋士は別々の資格ですが、両者をつなぐ仕組みも設けられています。奨励会に所属する女性が四段に昇段すれば女流棋士の資格を申請できますし、女流棋士がプロ棋士編入試験(棋士編入試験)に合格すれば、女流棋戦と棋士の公式戦の両方に出場できるようになります。また、成績優秀な女流棋士は、一部の棋士の公式戦(女流棋士枠が設けられているタイトル戦やNHK杯・新人王戦など)に出場できる場合があり、竜王戦もそうした棋戦のひとつです。プロ棋戦のしくみ(順位戦・フリークラス制度)を覚えようで紹介した棋士の制度と、女流棋士の制度は、こうした形で部分的につながっています。