寄せの基本を覚えよう
実戦の終盤で相手の玉を追い詰めていく過程は、大きく3つの段階に分けて考えることができます。この記事では、その中でも実戦で最も出番の多い「寄せ」について解説します。「王手」「詰み」など聞き慣れない言葉が出てきたら将棋用語集もあわせてご覧ください。
詰将棋・必至・寄せの違い
詰将棋のコツを覚えようで扱った一手詰めは、今まさに王手がかかっていて、正解の一手を読み切るパズルでした。これに対して必至(必死)を覚えようで扱った必至は、まだ王手はかかっていないものの、相手がどう指しても次の一手で確実に詰むと「判定」する技術です。
「寄せ」は、この必至や詰みが見える状態に至るまでの、もっと手前の段階を指す言葉です。序盤・中盤から続く駒組みや攻め合いの中で、相手玉を安全な場所へ逃がさないように、数手から十数手かけて追い込んでいく、実戦での一連の「組み立て」の技術のことを「寄せる」「寄せに入る」のように表現します。一手詰めや必至が「今の局面をどう読み切るか」というパズル的な技術であるのに対して、寄せは「そこに至るまでの局面をどう作っていくか」という、より実戦的で幅の広い技術だと言われています。
寄せの基本的な考え方
寄せには決まった正解の手順があるわけではなく、局面ごとに無数の選択肢がありますが、実戦でよく言われる基本的な考え方がいくつか知られています。ここでは、その中でも特によく紹介される考え方を4つ取り上げます。
玉の逃げ場を数え、一つずつ塞いでいく
相手玉の周りに逃げられるマスがいくつあるかを数え、それを一つずつ塞いでいくという姿勢は、一手詰めや必至を考えるときの基本と共通しています。寄せの段階でも、いきなり詰みや必至の形を狙うのではなく、まず玉がどこへ逃げられるかを把握し、危険な逃げ場から順に塞いでおくことが、遠回りのようでいて確実な進め方だとされています。
退路を塞ぐことを優先する
「王手は追う手」という格言があるように、王手をかけることが必ずしも最善とは限りません。むやみに王手をかけ続けると、かえって玉に逃げ場を与えてしまうことがあります。そのため寄せの過程では、王手の連続にこだわらず、まずは玉の退路(逃げ道)になりそうなマスを塞ぐ手を優先することがある、という考え方がよく紹介されます。急いで王手をかけるより先に、玉の周囲の安全地帯を減らしておくことが、結果的に早い寄せにつながると言われています。
攻め駒を玉の近くへ効率よく配置する
飛車・角・金・銀といった攻めに使う駒を、なるべく相手玉の近くへ効率よく配置していくことも、寄せの基本方針の一つとしてよく挙げられます。攻め駒が盤上に散らばったままでは、それぞれの利きが分散してしまい、玉に迫る力が弱くなりがちです。逆に、複数の攻め駒が玉の周辺で連携できる位置に集まると、逃げ場を塞ぐ力も、詰みや必至の形を作る力も高まりやすいとされています。
捨て駒の考え方
寄せの過程では、駒をあえて相手に取らせる「捨て駒」という考え方が使われることがあります。駒を捨てることで、相手の守り駒の働きを乱したり、玉の逃げ場を一時的に狭めたりできる場合がある、という一般的な考え方です。目先の駒得・駒損だけを見ると損な手に見えても、寄せ全体の中では有効な一手になることがある、というのが捨て駒の発想だと言われています。ただし、どの局面でどの駒を捨てるべきかは局面ごとに大きく異なるため、具体的な判断は実戦や詰将棋を通じて少しずつ身につけていくことになります。
寄せを身につけるには
寄せの力を伸ばすうえでまず役立つのが、詰将棋で読みの力を養うことです。一手詰めで「玉の逃げ場を数え、塞いでいく」という基本の感覚を繰り返し練習しておくと、実戦の寄せの中でも同じ考え方を応用しやすくなります。将棋の格言を覚えようで紹介しているような先人の知恵に触れることも、寄せの引き出しを増やす参考になると言われています。
そのうえで、やはり実戦の経験を積み重ねていくことが大切だとされています。寄せは局面ごとの応用が非常に幅広い技術であるため、本や記事で考え方を知るだけでなく、実際に自分の対局の中で「どう寄せればよかったか」を振り返りながら、少しずつ感覚を磨いていくことが上達の近道だと言われています。