必至(必死)を覚えよう
詰将棋のコツを覚えようでは、「今まさに王手がかかっていて、一手で詰ませられる」一手詰めの考え方を解説しました。この記事では、その一歩先にある実戦的な技術「必至(必死)」について解説します。「王手」「詰み」など聞き慣れない言葉が出てきたら将棋用語集もあわせてご覧ください。
詰みと必至の違い
詰みとは、王手をかけられた側が、玉を逃がせない・王手をかけている駒を取れない・他の駒で王手を防げない、という3つの条件がすべて満たされた状態のことでした。これに対して「必至(必死)」とは、まだ王手はかかっていないものの、相手がどんな手を指しても、次の一手で確実に玉を詰ませられる状態のことです。「必至をかける」「必至がかかっている」のように使います。
言い換えると、必至は「今はセーフだが、次の1手でどうやっても詰みが避けられない」局面のことです。詰みが「その瞬間の状態」を指すのに対して、必至は「次の1手先まで見通した状態」を指す、という違いがあります。
必至を知ることの実戦的な意義
終盤で相手の玉を追い詰めるとき、詰みまで正確に読み切るのは簡単ではありません。手数が長くなるほど、途中の一手を間違えると詰みが逃げてしまうこともあります。しかし、必至の形さえ作ってしまえば、そこから先の細かい変化を読み切らなくても、相手がどう応じても次に詰むことが保証されます。実戦では、この「必至をかける」という考え方が、終盤を安全に勝ち切るための重要な技術の一つとされています。
反対に、自分の玉が必至をかけられていないかを確認することも大切です。まだ王手がかかっていないからといって安心せず、「次にどう指されても詰まされてしまわないか」を考える習慣をつけておくと、終盤のミスを減らせると言われています。
例題で必至の考え方を確認する
非常にシンプルな例で、必至の考え方を確認してみましょう。下の図は、後手玉が1一に、先手の金が1三にいる局面です。先手はこれに加えて、持ち駒に金をもう1枚持っています。後手玉に王手はかかっていません。
この局面で、後手玉が動けるマスは1一の周囲の3マス(2一・1二・2二)だけです。この3マスすべてについて、実際に指せるかどうかを確認してみます。
- 1二へ動く:1三にいる先手の金は、1二にも利いています。玉を1二に動かすと、その瞬間に金の利きの中に入ってしまうため、この手は指せません(王手をかけられている駒を取れる・取れないと同じように、玉は相手の駒の利きがあるマスには動けません)。
- 2二へ動く:1三の金は、2二にも利いています。1二と同じ理由で、この手も指せません。
- 2一へ動く:1三の金の利きは1二・2二までで、2一には届いていません。そのため、後手玉が指せる合法手はこの1つだけです。
つまり、後手玉に許された手は「2一へ動く」の一手のみです。ここで、この手を指したあとに何が起こるかを見てみましょう。
後手玉が2一に動いたあと、先手は持ち駒の金を2二に打ちます。これで王手です。王手を受けた後手玉には、3一・1一・3二・1二へ逃げる手と、王手をかけている2二の金を取る手の、合わせて5通りの候補がありますが、そのすべてが指せません。3一・1一・3二・1二の4マスは、いずれも2二に打った金の利きの中にあるため、玉はそこへ動けません。残る「2二の金を取る」手も、1三にいるもう1枚の金がその2二に利いているため、取り返すとその金に取られてしまい指せません。逃げる場所も、取る手段もないため、この時点で後手玉は完全に詰んでいます。
このように、最初の局面では後手玉に王手はかかっていませんでしたが、後手が指せる唯一の手(2一へ動く)を指しても、次に先手の金打ちで必ず詰んでしまいます。これが「必至がかかっている」状態です。
必至を探すときの考え方
必至をかけるときは、いきなり王手をかけるのではなく、まず相手玉の周りの逃げ場を数え、それぞれの逃げ場に逃げられたときに次の一手で詰ませられるかどうかを1つずつ確認する、という手順で考えるとよいと言われています。この「玉の逃げ場を数える」という作業自体は、詰将棋のコツを覚えようで紹介した一手詰めの考え方と共通しています。必至では、これを「王手をかける前」の局面に対して行う点が異なります。
また、王手をかける手が必ずしも最善とは限りません。焦って王手をかけてしまうと、かえって玉に逃げ場を与えてしまい、必至が外れてしまうこともあります。「王手をかけずに、まず玉の逃げ場を1つずつ塞いでいく」という考え方も、必至をかけるうえで重要な視点の一つとされています。