寄せの速度計算(一手争い)を覚えよう
寄せの基本を覚えようや必至(必死)を覚えようでは、相手玉をどう追い詰めていくかという考え方を扱いました。実戦の終盤では、これに加えて「自分と相手のどちらが早く相手玉を詰ませられるか」を比較する場面がよく訪れます。この記事では、その比較のための技術である「速度計算」「一手争い」について解説します。「王手」「詰み」など聞き慣れない言葉が出てきたら将棋用語集もあわせてご覧ください。
速度計算・一手争いとは
終盤に入ると、自分の玉にも相手の玉にも危険が及んでいる局面がしばしば現れます。このとき、「自分が相手玉を詰ませるまでに何手かかるか」と「相手が自分の玉を詰ませるまでに何手かかるか」を比べて、どちらが速いかを判断する技術のことを「速度計算」と呼びます。両者の詰みまでの手数を比べ合うことから「一手争い」とも表現されます。
自分の方が速ければ(=相手より少ない手数で相手玉を詰ませられれば)、受けに手を費やさずそのまま攻め続けてよい局面だと判断できます。これを「一手勝ち」「速度で勝っている」のように表現します。逆に、相手の方が速ければ、そのまま攻め合っては先に自玉が詰まされてしまうため、どこかで受けの一手を入れる必要があります。これを「一手負け」「速度で負けている」と表現します。
手数の数え方
速度計算で数える手数は、一手詰めや必至で扱った「詰み」「必至」の状態に至るまでの手数です。具体的には、次の2つを見積もって比較します。
- 自玉側:相手があと何手指せば、自分の玉に必至(または詰み)がかかる状態になるか。
- 相手玉側:自分があと何手指せば、相手の玉を必至(または詰み)に追い込めるか。
たとえば、自玉があと3手で必至をかけられてしまう状態で、相手玉はあと2手で自分が必至をかけられる状態だとします。この場合、相手が自玉を詰ませ切るより先に、自分が相手玉を詰ませ切れることになるため、「自分の方が1手速い=一手勝ち」と判断できます。反対に、自玉があと2手、相手玉があと3手だとすれば、相手の方が速いため「一手負け」となり、攻め続けるのではなく受けの手を考える必要がある、という判断になります。
速度計算の使い方
速度計算は、終盤の分岐点で「このまま攻め続けてよいか、それとも受けに回るべきか」を判断するために使われます。自玉と相手玉の詰みまでの手数を比べ、自分が速いと読めれば、多少自玉が危険に見えても、受けに手を費やさず攻め続けるのが有力な方針になります。逆に相手が速いと読めれば、攻めの手を1手待ってでも、自玉の安全度を高める受けの手を入れる必要がある、という判断につながります。
この判断を的確に行うには、寄せや必至の考え方があらかじめ身についていることが前提になります。相手玉をあと何手で必至に追い込めるかを正確に見積もれなければ、速度計算そのものが成り立たないためです。
実戦での注意点
速度計算は終盤の重要な判断技術ですが、実戦で正確な手数を数え切るのは非常に難しく、プロ棋士でも読み違えることがあると言われています。手数を数えている間に、相手が受けに有効な一手を使ってくると、その一手によって相手玉側の詰みまでの手数が伸び、こちらの計算していた速度が狂ってしまうことがあります。また、自玉に王手がかかる筋がある場合には、その王手への対応(合駒や玉の移動など)に手数を取られることで、自玉側の手数が計算より短くなってしまうこともあります。
そのため、速度計算は「これで必ず勝てる」と断定できるほど確実な技術ではなく、あくまで終盤の方針を決めるための目安の一つとして使うものだとされています。読み違いの可能性を踏まえたうえで、余裕があれば複数の手順を比較したり、少し安全側に倒して受けの手を選んだりすることも、実戦では大切な判断だと言われています。
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