基本手筋を覚えよう
「手筋(てすじ)」とは、実戦の中盤・終盤で駒を効果的に使うための、よく知られたテクニックのことです。駒の動かし方や基本ルールを覚えたばかりでも、代表的な手筋の形を知っておくと、駒がぶつかり合う中盤戦で「次に何をすればいいか」が見えやすくなります。この記事では、初心者がまず覚えておきたい5つの基本手筋を、盤面つきで解説します。
たたきの歩
「たたきの歩」とは、相手の駒がいるマスに歩を進めたり打ったりして、相手に応手を強要する手筋です。ただ駒がぶつかって取り合うだけの普通の歩の突き合いと違い、「取らせることで相手の駒の配置を乱す」ことそのものが狙いになります。
下の例では、5二の金が5一の玉を守っています。ここに▲5二歩と歩を進めて金を取ると、後手は歩を取り返さなければ駒損のままになってしまいます。かといって△同玉と取り返せば、玉は守り駒を失ったうえに、本来なら下がっていたい玉が前に押し出される形になります。前に出た玉は、次の攻めの標的にされやすくなります。どちらを選んでも後手にとって望ましくない、というのが「たたき」の考え方です。
焦点の歩
「焦点の歩」とは、相手の複数の駒がまとめて利いている1マスに、あえて歩を打つ手筋です。どの駒で取ってくれても、取った駒が本来の持ち場から離れてしまい、結果的に守りが乱れる、という「取り方に困る」状況を作り出せるのが特徴です。
下の例では、5二のマスに玉・金・銀の3枚すべての利きが重なっています。▲5二歩と打つと、△同玉・△同金・△同銀のいずれで取り返しても、その駒は元の位置を離れることになります。例えば玉が取れば、守り駒を失ったまま玉自身が前に出ることになり、陣形が薄くなってしまいます。
桂頭の歩
桂馬は、前方2マス・横1マスの位置にしか跳べない、少し変わった動きをする駒です。銀や金のように「横に1マス動いて避ける」「後ろに引いてかわす」ということが一切できません。この弱点を突くのが「桂頭の歩(けいとうのふ)」です。桂馬の真正面のマス(桂頭)に歩を進めて、逃げ場のない桂馬を直接攻めます。
下の例では、7三の桂馬に対して▲7四歩と歩を進めています。桂馬はこのマスの歩を取ることができず、横や後ろに1マス動いて逃げることもできません。唯一の逃げ道は前方へ跳ねることですが、そうすると敵陣近くまで深入りすることになり、後手にとって決して楽な選択ではありません。
両取り
「両取り(りょうどり)」とは、1回の指し手で相手の2つの駒に同時に利きをかける手筋です。相手はどちらか一方しか守れないため、次の一手でもう一方を確実に取ることができます。いわゆる「フォーク」に当たる基本手筋で、飛車・角・桂馬などでよく起こります。
下の例では、▲5五桂と桂馬を跳ねることで、離れた位置にある後手の銀と金の両方に同時に利きが生じています。後手はどちらか片方しか助けられないため、桂馬はもう一方を取ることができます。
王手飛車取り
「王手飛車取り」とは、両取りの中でも特に強力な形で、1回の指し手で王手をかけながら、同時に相手の飛車にも利きをかける手筋です。玉に王手がかかると、相手は他のことを後回しにしてでも必ず王手への対応を最優先しなければなりません。そのため、普通の両取りのように「守る駒を選べる」余地がなく、飛車はほぼ確実に取られてしまいます。この「王手を放置できない」という将棋のルールを利用している点が、単なる両取りとの大きな違いです。
下の例では、▲5三角と角を動かすことで、一方の対角線上で後手玉に王手をかけながら、もう一方の対角線上で後手の飛車にも同時に利きをかけています。後手はまず王手を防がなければならないため、飛車を助ける余裕がありません。