一般棋戦のしくみ(NHK杯・朝日杯・銀河戦など)を覚えよう
将棋のニュースやテレビ番組で、「NHK杯」「朝日杯」「銀河戦」といった名前を見聞きしたことがあるかもしれません。これらは、竜王戦や名人戦のような8大タイトル戦とは別に開催されている、プロ公式戦の一種です。この記事では、こうした「タイトル戦ではない公式戦」を指す「一般棋戦」という言葉の意味、タイトル戦との違い、代表的な一般棋戦の特徴、そして「早指し」という言葉の意味を、初心者にもわかりやすく解説します。
一般棋戦とは
プロ棋士の公式戦は、大きく「タイトル戦」と「一般棋戦」に分けて捉えることができます。タイトル戦は、竜王・名人・王位・王座・棋王・王将・棋聖・叡王という8つの称号(タイトル)のいずれかを争う棋戦です。それに対して一般棋戦は、こうしたタイトルを争うわけではない、それ以外の公式戦の総称です。
「一般棋戦」という呼び方だけを聞くと地味な棋戦のように感じるかもしれませんが、実際にはNHK杯テレビ将棋トーナメントのように長年にわたってテレビ放送されている、ファンにとってなじみ深い棋戦も含まれます。「タイトル戦ではない」という一点だけが共通点であり、それぞれの棋戦は開催方式も参加資格も個性豊かです。
タイトル戦との違い
タイトル戦は「挑戦手合制」という方式で行われます。まず順位戦や各棋戦独自の予選・リーグ戦を経て挑戦者を1人に絞り込み、その挑戦者と現在のタイトル保持者が「番勝負」と呼ばれる複数局のシリーズを戦って、勝ち越した方がタイトルを獲得(防衛または奪取)します。
一方、一般棋戦の多くは、参加する棋士たちが1回でも負けたら敗退する「勝ち残り式トーナメント」の形式で行われ、勝ち上がった1人が優勝という形で決着します。番勝負のように複数局を戦って決めるのではなく、基本的には1局ごとの一発勝負で勝敗が決まっていく点が、タイトル戦との大きな違いです(棋戦によっては、決勝だけ複数局制になっている場合もあります)。
また、一般棋戦の優勝者にも「NHK杯選手権者」のような称号が贈られることがありますが、これは段位やタイトルの代わりになるものではなく、その棋戦の中だけで使われる呼び名です。この点も、獲得すると段位に代わって名乗れる8大タイトルとは異なります。
代表的な一般棋戦
一般棋戦にはさまざまな棋戦がありますが、ここでは特によく知られているものを、性質の紹介にとどめて簡単に紹介します。個々の棋戦の出場条件や運営方式は見直されることがあるため、最新の正確な情報は各棋戦の公式情報でご確認ください。
NHK杯テレビ将棋トーナメントは、NHKで長年放送されているテレビ棋戦です。持ち時間の短い早指し戦をトーナメント方式で戦い、優勝者は「NHK杯選手権者」と呼ばれます。対局の様子がテレビで放送されるため、初心者がプロの対局に触れる入り口としてもよく知られています。
朝日杯将棋オープン戦は、新聞社が主催する棋戦で、予選を勝ち上がった棋士たちがトーナメント方式の本戦を戦います。持ち時間はタイトル戦に比べて短く設定されており、1日のうちに複数局が指されることも珍しくありません。
銀河戦は、将棋専門のテレビ・配信チャンネルが主催する棋戦です。持ち時間の短い早指し戦で、優勝者には「銀河」という称号が贈られます。対局の模様が番組として放送・配信される点が特徴です。
新人王戦は、若手棋士を中心とした参加資格が設けられている一般棋戦です。年齢や段位による出場条件があり、経験を積んだベテラン棋士や、すでにタイトル戦を経験した棋士は基本的に対象になりません。この棋戦で好成績を挙げた若手棋士が、後にタイトルを争う実力者へと成長していく例も多く見られることから、若手プロ棋士の「登竜門」の一つと位置づけられています。
なぜ一般棋戦が存在するのか
8大タイトルだけがあれば十分ではないか、と思うかもしれません。しかし、一般棋戦には一般棋戦なりの役割があります。
まず、棋士にとって一般棋戦は、実力を示す機会であると同時に、対局料や賞金を得る活動の場でもあります。タイトル戦に挑戦できる棋士はごく一部に限られますが、一般棋戦であれば、より多くの棋士が優勝を目指して活躍する舞台に立つことができます。
また、NHK杯や銀河戦のようにテレビ・配信で放送される棋戦は、将棋になじみのないファンが対局を目にするきっかけにもなり、将棋というゲームの普及にも一役買っています。持ち時間が短い早指し戦は、1局が短時間で決着するぶん番組としても見やすく、この点も普及に貢献していると言えるでしょう。
さらに、新人王戦のように若手棋士を対象とした棋戦は、経験の浅い棋士たちが実戦経験を積み重ね、頭角を現していくための重要な舞台になっています。このように、一般棋戦は8大タイトルとは違う形で、将棋界を支える役割を担っています。
「早指し」とは
一般棋戦の紹介の中で何度か登場した「早指し」とは、持ち時間が短く設定された対局形式のことを指す言葉です。名人戦や竜王戦のように持ち時間が非常に長く、対局が2日間に及ぶこともあるタイトル戦に対して、一般棋戦の多くは持ち時間が短く、1日のうちに、あるいは1日に複数局を指し切る形式で行われます。
持ち時間が短くなるほど、対局者はじっくり読み切る時間が限られるため、直感的な判断力や、限られた時間の中で最善手に近い手を選ぶ力が試されます。同じ棋士同士の対局でも、持ち時間の長いタイトル戦とは違った緊張感や面白さがあると言われています。持ち時間・秒読みの基本的な考え方については、千日手・持将棋・持ち時間を覚えようでも解説しています。